町田 龍一郎 助教授
MACHIDA Ryuichiro
Tel : 0298-53-4910/4661
Fax : 0298-53-6614
E-mail : machida@sugadaira.tsukuba.ac.jp


研究室のHP:
研究領域 動物系統分類学
研究テーマ 昆虫類の起源・高次系統の比較発生学的検討および分類学的研究
研究の概要

 昆虫類は動物界で約3/4の種類数を占める、地球上で最も繁栄している動物群の一つである。このような昆虫類はどのように地球上に現れ、そして進化し、現在に至ったのであろうか。昆虫類は翅を含めた特徴的な体制を獲得したが、このような昆虫類の体制が体節動物・節足動物の系統進化のなかで出現してきた過程はどのようなものであったのだろうか。未だに見方が定まっていないが、このように多様性に富む昆虫類の最も妥当な高次系統はどのようなものであろうか。私たちの研究室では、このような問題に比較発生学の立場から取り組んでいる。

 先ず、なぜ「比較発生学」なのか。なぜ、あえて小さな卵や胚の研究をしなければならないのか。ヘッケルの生物発生原則「個体発生は系統発生を繰り返す」の真偽はさておき、恐らく確かにいえるだろうことは、グラウンド・プランや体制などのより重要な「骨組み」や「設計」は、より発生の初期に形作られるだろうということである−それは家を建てるときと同じように。したがって、昆虫類の起源や大系統などの高次系統に関する考察においては、比較発生学的アプローチは最も有効と考えられるからである。そして、系統学において非常に大事な比較形態学的検討にとっても、発生学は欠くことができない。すなわち、形態学的な比較は、構造間の相同性の把握が正しくなされて、初めて行われうる−つまり、構造・体制の形成過程を追跡する(比較)発生学は(比較)形態学の基本なのである。



全割を開始したイシノミの卵

 このような背景から、私たちの研究室では昆虫類の高次系統群を網羅するように材料を選択、研究を行い、多くの発生形質に注目することにより、昆虫類の系統進化を描写してきた[写真(上)は全割を開始したイシノミの卵:真正昆虫類における、特殊化の結果とされない、全割型卵割の初の確認である]。例えば、胚膜の発生を詳細に検討した結果、昆虫類の進化は、胚と胚膜の機能分化の変遷の歴史と捉えることで、より深く理解されることを示した。また、昆虫類の高次系統を再構築し、現在主流である「内顎類−外顎類システム」を棄却した。昆虫類の起源から節足動物の系統進化へと議論を発展させるため、最も原始的な昆虫類であるカマアシムシ目の胚発生の検討、さらに多足類の発生学的研究も開始した。この結果、内顎類昆虫の単系統性がさらに不確かなものであることが明らかになった。そして驚くべきことに、昆虫類の姉妹群とされてきた多足類(ムカデ綱)が鋏角類といくつかの重要な発生形質において派生形質共有を示す可能性がでてきた:両群の類縁が示唆され、節足動物で主流の高次系統「大顎類−鋏角類システム」の再考を迫るはじめての形態学的データである[写真(下)はオオムカデ目の胚帯の左右への分離のステージであるが、このような特殊な現象も鋏角類のクモ目などと共通する]。


セスジアカムカデの初期胚

 比較発生の視点に立った昆虫を中心とした節足動物の系統進化学の分野で日本は国際的センターであり、当研究室はこの一翼を担っていきた。このような研究と並行して、日本では未開拓のイシノミ類・シミ類の分類学的研究も行っており、本邦産イシノミ・シミ類相の解明を目指している。


参考文献
  1. Ikeda, Y. and R. Machida (1998) Embryogenesis of a dipluran, Lepidocampa weberi Oudemans (Hexapoda: Diplura): External morphology. Journal of Morphology, 237(2): 101-115.
  2. Tojo, K. and R. Machida (1998) Early embryonic development of the mayfly Ephemera japonica McLachlan (Insecta: Ephemeroptera, Ephemeridae). Journal of Morphology, 238(4): 327-335.
  3. Machida, R. (2000) Serial homology of the mandible and maxilla in the jumping bristletail Pedetontus unimaculatus Machida, based on external embryology (Hexapoda: Archaeognatha, Machilidae). Journal of Morphology, 245(1): 19-28.
  4. Sturm, H and R. Machida (2001) Archaeognatha. Handbuch der Zoologie Vol. 4. 213 pp. de Gruyter Verlag, Berlin.
  5. Ikeda, Y. and R. Machida (2001) Embryogenesis of the dipluran Lepidocampa weberi Oudemans (Hexapoda: Diplura, Campodeidae): Formation of dorsal organ and related phenomena. Journal of Morphology, 249: 242-251.
  6. Machida, R., Y. Ikeda and K. Tojo (2002) Evolutionary changes in developmental potentials of the embryo proper and embryonic membranes in Hexapoda: A synthesis revised. Proceedings of Arthropodan Embryological Society of Japan, 37, 1-11.