八畑 謙介 講師
YAHATA Kensuke
Tel : 0268-74-2002
Fax : 0268-74-2016
E-mail : yahata@sugadaira.tsukuba.ac.jp または yahata@biol.tsukuba.ac.jp
研究室のHP:http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~yahata/

研究領域 動物系統分類学
研究テーマ 節足動物の卵巣構造と卵形成様式の進化(多足類、特に倍脚類を中心として)
研究の概要

 節足動物の2大分類群である大顎類(甲殻類・多足類・昆虫類)と鋏角類(カブトガニ類・蛛形類)の卵巣構造と卵形成様式には、系統を反映していると考えられる顕著な相違のある2つのタイプがあることがわかっています。そのような相違がどのような共通祖先型からどのように生じてきたのかは大変興味深い問題です。ところが、多足類の卵巣構造や卵形成様式については過去の知見が少ないうえ、大顎類の一群である倍脚類の卵巣構造が鋏角類に類似しているとする報告もあり、このことが節足動物の卵巣構造と卵形成様式の進化を理解するうえで混乱を引き起こす原因のひとつとなっていました。そこでこれまでに倍脚類の卵巣構造と卵形成様式について比較形態学的な手法による研究を進めてきました。これまでの研究により、倍脚類の卵巣に鋏角類タイプとの直接的な類似のないこと、倍脚類の卵巣構造と卵形成様式には倍脚類の2大分類群である触顎類と唇顎類とに対応する2つの基本型があること、2つの基本型のうち触顎類タイプが倍脚類の卵巣構造と卵形成様式の祖先型に近いことなどを明らかにし、倍脚類の卵巣構造と卵形成様式の進化についての理解を深めてきました。

 今後の課題として、以下のような研究を計画しています。

(1)倍脚類の卵巣のいくつかの特徴は倍脚類の高次分類群間の系統関係を解明するための有効な手がかりになると思われます。このような卵巣構造の特徴をもちいたの高次系統の再構築を計画しており、未だ未解明のいくつかの高次分類群間の系統関係について、卵巣構造の進化の側面から言及できると期待しています。

(2)倍脚類の卵巣のいくつかの特徴は一度に産む卵の数や卵の大きさのような系統とは直接関係しない要因と関連していると思われます。生態的特徴の異なる種間で卵巣構造と卵形成様式を比較し、どのような要因が卵巣のどの特徴と関連しているのかを解明したいと考えています。

(3)倍脚類を含めて多足類の卵巣構造と卵形成様式は互いに非常によく似ているうえ、多足類以外の大顎類(甲殻類と昆虫類)には見られない独自の特徴のあることが明らかになりつつあります。そこで、多足類の卵巣構造と卵形成様式の進化の解明を目指して、未だ卵巣構造や卵形成様式に関する知見の乏しい多足類各群(ムカデ類・コムカデ類・エダヒゲムシ類)についても観察を行う計画です。

(4)多足類の卵巣には他の大顎類(甲殻類・昆虫類)と鋏角類の両方の特徴を折衷的に合わせた中間的な構造があると推測しています。それが大顎類タイプと鋏角類タイプが分かれたときの中間型の名残なのかどうかは現段階ではわかりませんが、このような卵巣構造を詳細に観察することで、両タイプが共通祖先型からどのようにして生じてきたのかを考察するための重要なヒントが得られると期待しています。

(5)現段階ではまだ着手していませんが、節足動物全体の卵巣構造と卵形成様式の進化を明らかにするため、多足類だけでなく他の節足動物(クマムシ類やカギムシ類も含む)についても観察を行う予定です。さらには、節足動物と同じ祖先から進化したと考えられる他の動物門に関しても比較観察を行いたいと考えています。

 なお、このような節足動物の卵巣構造と卵形成様式の進化に関する研究とは別に、動物の系統進化や分類に関連した研究テーマも考えています。


参考文献
  1. K. Yahata and T. Makioka. Preliminary note on the ovarian structure in the penicillate diplopod, Eudigraphis takakuwai nigricans (Miyosi). Proc. Arthropod. Embryol. Soc. Jpn., 26: 13-16, 1991.
  2. K. Yahata and T. Makioka. Phylogenetic implications of structure of adult ovary and oogenesis in the penicillate diplopod, Eudigraphis nigricans (Miyosi) (Diplopoda: Myriapoda). J. Morphol., 222: 223-230, 1994.
  3. K. Yahata and T. Makioka. Postembryonic development of the ovary in the penicillate diplopod, Eudigraphis nigricans (Miyosi) (Diplopoda, Penicillata). J. Morphol., 224: 213-220, 1995.
  4. 八畑謙介・牧岡俊樹. 倍脚綱オビヤスデ類数種の成体卵巣の構造について. Proc. Arthropod. Embryol. Soc. Jpn., 30: 29-30, 1995.
  5. 八畑謙介・牧岡俊樹. タマヤスデ類(倍脚綱・唇顎亜綱)の卵巣構造. Proc. Arthropod. Embryol. Soc. Jpn., 31: 21-22, 1996.
  6. K. Yahata and T. Makioka. Phylogenetic significance of the structure of adult ovary and oogenesis in a primitive chilognathan diplopod, Hyleoglomeris japonica Verhoeff (Glomerida, Diplopoda). J. Morphol., 231: 277-285, 1997.